倦怠の勿忘草

“汚れつちまつた悲しみは 倦怠のうちに死を夢む”

君の名は希望

 

 

あぁ

 

名を失った君よ

 

名を失い

 

皆の偶像となった君よ

 

私は君への愛情を

 

胸に流る清い水のような愛情を

 

 

君は詩であるから

 

詩の形で応えるしかないのだ

 

君に恋したあの日々を

 

いまここから振り返り

 

歌うことしかできない

 

またそれは

 

長い月日を経て

 

私の中に固まった

 

欠けることを知らない石

 

堅苦しい批評文のように現る

 

真っ黒い石であるか

 

 

君の旋律は

 

暗い洞穴に響く

 

水滴の音

 

孤独のなかに響く

 

癒しの音

 

水が堅い岩肌を砕き

 

手鏡のような穴を開ける

 

暗闇に差した一筋の光が

 

私の輪郭をそこへ映し

 

初めて私は私を見た

 

 

そうだ!

 

私があるということ!

 

ここにあるということ!

 

たとえ孤独であろうとも

 

私はあるのだ!

 

こんなに感動的なことがあるか!

 

足元が見える!

 

真っ暗闇ではない!

 

この洞穴の最果てが見えるのだ!

 

幽かに君の姿が見える

 

手を差し出し

 

光へと誘う君の影

 

…?

 

君に導かれ穴を出ると

 

そこは崖であった

 

波の音が聞こえる

 

夕陽が燃えて落ちようとしている

 

後ろには穴

 

前には

 

美しくも怖ろしい景色

 

…?

 

君はどこに消えた?

 

私が確かめた君の影は?

 

希望とは

 

何であったか

 

 

真実の叫び

 

私が

 

私であることの叫び

 

それは醜い声であった

 

君は私を見た

 

おかげで私は私を確認した

 

その表情の醜さ

 

感動のあまり

 

落胆する間も無く歩いたのだ

 

 

君は光か

 

私は確かに

 

君の姿を見た

 

その透明な色

 

君の名前は希望だ

 

いま私が

 

君への愛を歌うなら

 

君の名を「希望」と歌うのだろう