倦怠の勿忘草

“汚れつちまつた悲しみは 倦怠のうちに死を夢む”

恋愛詩「潮騒」

 

 

紫穂の香の

揺れるまに咲く

白浜に

紅い貝殻

ひらふ乙女よ

ひとり

 

あのこは

なにを歌つてゐるのでせうか

みはてぬあいを

みつめるひとみ

 

わたしは耳を澄まします

 

みぎわに隠れた

声を探して

 

しおらしく

寄せたまゆあひと

しらまなこ

潮風に揺れる

黒いヴェール

 

潮騒のリズムはゆるやかに

焦る私を諫めてる

 

頬を撫でると

首を傾げて

戯れて

雲の隙間に

笑む匂ひ

 

恋とは刹那で

ありませうか

 

秘密が朋に紡がれて

戀が生まれて

消えるのです

 

潮曇

隙に翳めた

斜陽の香り

君の髪毛と

交じり逢ふあか

 

すべては交叉して

飾り合ふのでした

 

ひとつは単純

ふたつが複雑

 

見惚れた男が

詩を書き留める