ふかんしょう
よく、わかりません。
私、みんなの話す言葉が
よく、わからないのです。
…
私、勉強は苦手です。
質問されている意味が
よく、わかりませんから。
何を目的に、
どんな手引きで、
答えに導こうとするのか、
考えても考えても、
わかるはずがない。
わかるはずがないから、
わかりたくありません。
点数を取る、ということ。
それがどうしたら、出来ることなのか、
私には、わからないのです。
競い合って、勝つ、という経験が無いので、
その、よろこびも、わからない。
よろこびかたが、わからない。
…
あなたのことを知りたいの。
楽しそうな顔で、言われました。
私は、なぜあなたが、
私のことを知りたいのか、
よく、わかりません。
私は、あなたのことなんか、
特別に、知りたくないもの。
あなたが、私のことを知りたいのは、
きっと、私の何かを、狙っているの。
私は、その何かが、わからないから、
あなたとは、これ以上、関わりたくない。
私に、触れないでください。
…
私、芸術、というものも、
わかりません。
音がわかります。
色がわかります。
花が眠らないということもわかります。
けれども、 どうして、ひとが、
わざわざ、知恵をしぼって、
その、獣のようなカラダを、
花のようにかざりつけたがるのか、
わたしには、わからない。
人間のカラダには、人間のカラダの、
うつくしさがあるはずでしょう?
音楽は言葉をごまかす。
意匠は美醜をごまかす。
麗句は真心をごまかす。
芸術って、勉強よりも、もっと、
綺麗なものだと、思ってた。
ゴツゴツした言葉を玩ぶことなんて、
私にも、できます。
…
私、思想というものも、
信じられないの。
私は、私で、私以外では、
ないはずなのに、
どうして、私が、
一生をかけて、他の人間に、
なろうとしなきゃいけないの?
私は、そんなに簡単に、
決めてもらえる、人間じゃ、
ないわ。
…
私はね。
なにも、感じとらない。
どうして?
私がいちばん、私自身のこと、
わかるからです。
だから、私は、
私で、勉強と、表現とを、
私が、うつくしいと感じるかたちで、
完成させないといけません。
それだけしか、私には、
わからないのです。